コードギアス最終回を前に

いよいよ、あとわずかでコードギアス最終回放送となりました。泣いても笑っても、これで51話に及ぶルルーシュの旅路に終止符が打たれることになるわけです。


物語を消費するという行為は、それが語られていく過程で生まれた様々な可能性の枝を切り落としていく行為でもあります。もちろん作品として提示されるそれは、あらかじめ一本の道が決まったものではあるのですが、消費する我々にとっては、そこに辿り着かない限り無数に枝分かれする先の見えない道に他なりません。


コードギアスという物語も、既にたくさんの枝を切り落とされてしまってきているわけですが、先細ったその先にも、僅かにまだ枝分かれが残っているように思います。
そこで、残された時間の中で、可能性の枝をもう少しだけ、探ってみたいと思います。


ルルーシュの結末
ルルーシュの結末として最も多く予想されているのは、彼の死によって物語が閉じられるというものではないでしょうか。
「ゼロ・レクイエム」という目標のため、多くの血を流し、自分が世界を征服する必要があると語ったルルーシュ。しかし一方で彼は、これまでずっと他者に運命を支配されることを拒み続けてきました。
そのルルーシュがみんなに与えたいという願う「明日」が、ギアスという超常の強制力によって培われたものであるはずがない、という推測からも、彼が自身の支配を永続のものとするつもりがないことは推測されます。
同様の理由から、ナナリーに後事を託すというのも考えにくいことです。新生ブリタニアという彼の作り上げた枠組みそのものが、彼の中では紛い物でしょうから、それを残すことはポリシーに反する。
(それにナナリーも、既に自身の手を汚しています。ルルーシュがどう思うかは別にして、彼女がそのまま至尊の座に残ることを望むとは思えない。そもそもゼロ・レクイエムは彼女の生存という条件なしに組み立てられたものであるはずです)


しかしならば、なぜ彼は強権によってでも、無理に世界を統一しようとしたのか。
たとえ彼を打倒することを目標に人々が団結することが目的だったとしても、彼が打倒されたあと、結局人々は己の私利私欲に従い同じ過ちを繰り返すことは目に見えています。


でも、彼が残したいと考えているのが、「結果」ではなく「過程」だとしたら?


おそらく、彼は全ての敵を打ち倒し、全世界に皇帝として君臨したその座で、滅ぼされることを望んでいるのではないでしょうか。
そして悪逆の限りを尽くし、他者を虐げ支配しようとした者の末路を、反面教師として人々の記憶に残そうとしているのではないでしょうか。
「最悪」を経験した者は、それ以後その「最悪」を回避しようと望むはずです。
シュナイゼルが、恐怖と力で人々の選択肢を奪おうとしたのとは異なり、人々には未来を選ぶ自由を残し、自らという絶対悪を示すことでより良い選択肢を模索してもらおうというのが彼の望みなのではないかと。


そして人々の前で少しでも華々しく、ショーのように帝国の瓦解を演出する者として、最も信頼する最強の戦士、スザクを配するつもりなのでしょう(もちろんユフィの仇討ちを遂げさせてやるためにも)。
そのため、大切な人々は全て自分から遠ざけた。
ジェレミアの処遇は未定ですが、彼は最期までルルーシュに殉じる覚悟なのではないかと思います。以前フレイヤの爆心地でスザクに語った通り、彼とスザクは最期まで相容れないのがふさわしい立ち位置のような気もします。




・あるいは、考えられる他の結末
……さて、これは最も予想されていると思われる、ルルーシュが死ぬというケースに基づいての推測ですが、これまでルルーシュの活躍に胸躍らせてきた身としては、ちょっと寂しすぎる結末な気もします。
また、如何なる形であれ自殺を望むのは逃避であり、ある意味で容易い選択です。
そこで、敢えてルルーシュが死なないのではないかという方向性も考えてみました。



まず、C.C.に笑顔を与えるという彼の約束。
これは彼女をコードの呪いから解放するという約束に思えます。
コードを移された者は不死となりますから、当然彼は死なずに終わる(もちろん、上記の「分かりやすい形で殺される」演出はそれでも可能です)。
そして不死となった彼は、神根島の遺跡でCの世界に閉じこもり、永遠にそこで過ごす罰を受けるつもりかも知れません。
それは、永久に人々の行く末を見守り続ける、ある意味で死よりも厳しい行為でしょう。しかし、人々の未来を信じようとした彼にとって、それは義務であるとも考えられます。



もう一つ、24話でナナリーの目が開いたことからの連想なのですが、スザクによって命ではなく、ギアスの元である「目」を奪われるという可能性。
彼のギアスである「王の力」は彼がシャルルに否定してみせた「他者への意思強制」の力そのものでもあります。かつて「他者を支配する力」を最も望んだ少年が、今、それを最も憎むようになっている。そんな状況で、「王の力」を与えられることで始まった物語が「王の力」を奪われることで閉じるというのも、ある意味収まるべき地点かも知れません。
ナナリーが光を取り戻したのと対称に、光を失ってそれでも生き続けることでこれまでの罪を償う。永遠の生とは別に、これもまた厳しい結末になると思います。




いずれにせよあと30分たらずで全ての可能性は収斂し、たった一つの結末が示されることになるわけです。
どういう形になるかは分かりませんが、満足のいく結末が見られることを望んでやみません。