小説同人誌『THE LAST WANNABIES』 全作紹介


去る11月18日に開催された文学フリマにて、痛快毒舌ブログ「春巻たべた」のharutabe氏の主宰する、はてなに残された最後の文壇・消費社の記念すべき初同人アンソロジー「THE LAST WANNABIES」が発刊され、そのオリジナリティ溢れるスケブによる宣伝が一躍はてなでも話題となったことは記憶に新しいところです。
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明日から東京都有明市で開催される歳末イベント、第83回コミックマーケットにて、この貴重な同人誌が再頒布されることが決定致しました。
スペースとかはよく覚えてないのでharutabeさんのブログを読んで下さい!
というのはさすがに不親切なので!12/29(土)東Q-34b「消費社」さんです!もう明日ですね!ちなみに超人気サークルうつらうららかさんのスペース(壁)のすぐそばです!(島中)。
編集長自らによる貴重な対面頒布の機会になりますので、スケブ宣伝を生で観たいという方は帰省前に是非、有明に立ち寄られることをお勧め致します。


ただ、中には「スケブ宣伝を観に行くためだけに有明は遠い…」という他県の方もおられると思います。そうした方のために、こちらの同人誌、「THE LAST WANNABIES」を入手し拝読する機会を得ました不肖、小生より、この場をお借りしまして、本誌に収められました全作の紹介をさせて頂こうと思います。

  • 「ノブの話をしましょうか」明石暮子

織田信長は、葬儀の席で父・信秀の位牌を灰にまみれさせた。信長の忠臣・平手政秀は死を以ってこれを諌めた。
これは我々のよく知る、織田信長という人物が歴史に現われ、そして歴史が終わるさまを描いた物語。
魂を砕かれ尚立ち上がる者たちの闘いが躍動する筆致で描かれ、更に渡来の美姫が謎めいた宿命へ人々を誘う。
旧き良き伝奇のスタイル、圧倒的筆致で一気に読ませるオープニングにふさわしい一作。

一作目がライトノベルの源流、山田風太郎エピゴーネンであるならこちらはライトノベルの祖、ブギーポップを思わせる一作。
都市伝説より生まれた謎の怪異を砕く正義のヒロイン、右腕フードプロセッサー女。そしてその相方である語り手の「僕」。
安定感あるフォーマットを踏襲しながら、どこか奇妙で哀切を伴う物語は、やがて「僕」に意外な結末を齎す−。

  • 「軽演劇台本「手・股・鼻」」urbansea

戯曲形式の異色を放つ一作。
全編ダジャレで構成された、ある意味特定はてなユーザーにはたまらない一作。
やや下ネタ気味なので女性と紳士にはお勧めできないかも知れないが、気の強いお姉さん好きの特殊紳士には逆にお勧め。
そして思えばここまで三作ともヒロインが強気なお姉さんキャラでした。

  • 「ファック・ザ・システム」kubomi

同窓会。それは過去を美しい思い出とすることができる者たちのみが集う時間。
同窓会に現われなかった三人の男女。彼らは、過去を過去とすることができぬまま、それぞれの道を歩んでいた。
しかし男の一人が、父の死をきっかけにある「力」を手にしたことで、三人の運命が廻り出す。
ミステリ要素を含んだ青春群像。

  • 「勇気一つを友にして」のりしろ

「むかしギリシャイカロスは」合唱にも歌われるイカロスは、一体何を目指して飛んだのか。いつの時代も若者はままならない何かに突き動かされ、その翼を灼く。
恋と衝動を不思議な味わいで描く、握手小説。

  • 「僕のノーザンライト」握力

歌っていたのが、彼女だったから。
一目で彼の魂を奪った歌姫。同級生でありながら隔絶した存在感を持つ彼女に傾倒するうち、主人公の周囲で起こる不可解な出来事。だけど誰が死のうと世界が終わろうと知ったことか!
熱量のこもった文章で「恋」を描ききった怒涛の一作。

  • 「望郷軌道」harutabe

僕は木星ステーション勤務のオペレータ。テレビのSFのように華々しくもなければワクワクもない。悪環境で少しずつ身体を病んでいく、無味乾燥な単純労働者。
しかし彼が地上の少年に見せたまやかしの「宇宙のロマン」が、やがて彼自身をロマンの主人公に仕立てていく……。
主宰自らの筆による、いかにもこの人らしいハードSF御伽噺。

明治のはじめ、とある宿場町で起きた一つの事件が全ての始まりだった。時は移って現代、しがないホストが巻き込まれた事故は、彼の周囲に蜘蛛の糸のように張り巡らされた緻密な仕掛けを顕わにしていく−。
練りに練られたクライムサスペンス。着想・枚数ともに収録作中最大の量を誇る作品。
早苗さんの店でバイトしたい。

  • 「イン・ブルーム」cattyman

抜きました。





あ、オチが全部持ってってます。


  • 「タイムマシンの熊」犬紳士

9作まではあっさり書けたんだけど10作目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的にLobotomy氏の作品を選んだ。
SFから始まってSFで終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、大山倍達以降の熊殺しの末裔となった作品でもあるし、紹介する価値はあるのだろうけど、もっと他にいい作品がありそうな気もする。


というわけで、このアンソロジーの意図にそって、もっといい10作目はこんなのどうよ、というのがあったら教えてください。





…いかがでしたでしょうか。
今ならスケブを観に行った方全てがたったの500円でこの本に掲載の作品を読み放題となるビッグチャンス。
是非、あなたもこの機会に有明を訪れ、「まどかマギカ」のシャフトの次作アニメのキャラクターデザインに決定したカントク氏や「ねこみみモード」でおなじみのアニメ「月詠」の原作者、有馬啓太郎氏のサークルに並んでみてはいかがでしょうか。